「英語を仕事にしたい」 そう願ったとき、あなたならまず、何を始めますか?
TOEICの公式問題集を買いに走る。英会話スクールの門を叩く。翻訳養成講座のパンフレットを取り寄せる……。多くの人が、こうした「学習の準備」からスタートします。
でも、ここで少しだけ、立ち止まってほしいんです。
英語を仕事にしたいという情熱は、素晴らしい。けれど、「英語を仕事にする」という言葉の解釈を間違えたまま走り出すと、膨大な時間とお金をつぎ込んだ先で、「あれ、私がやりたかったのはこれじゃない」と、迷子になりかねません。
あなたがその一歩を踏み出す前に、整理しておくべき「現実」をお話しします。
「英語を使う仕事」と「英語が仕事」は、似て非なるもの
まず、ここを自分の中ではっきりさせておきましょう。
「英語を使う仕事」:
本業(営業、経理、企画、ライターなど)があり、その目的を果たすための「道具」として英語を使う。
「英語が仕事」:
英語そのものを商品にする。翻訳、通訳、語学講師など。高い正確性と「正解」を求められる、いわば職人の世界。
多くの人が「英語を仕事にしたい」と口にするとき、実はこの2つを混同しています。
今の自分のキャリアや人生経験を「英語という翼」で広げたいのか。それとも、真っさらな状態で「語学のプロ」として生きていきたいのか。
ここを曖昧にしたまま「とにかく英語力を上げなきゃ」と焦るのは、目的地を決めずにエンジンの整備だけを繰り返すようなものです。
翻訳・通訳だけが「英語の仕事」ではない
英語の仕事、と聞いて思い浮かぶのは、たいてい翻訳、通訳、講師の3つです。しかし、これらはどれも極めて専門性が高く、参入障壁も高い。
「そこまでのプロを目指す覚悟はないけれど、英語が好きで、自分なりに積み上げてきたものはある」……そんな方のための席が、実は市場にはぽっかりと空いています。
それは、英語を「使って」新しい価値を生み出す仕事です。他人の言葉を正確に移し替えるのではなく、自分の視点、自分の言葉を英語で綴る。そういう「表現者」としての選択肢があることを、まずは知ってください。
英語力より先に「棚卸し」をすべき理由
英語を仕事にしたいと思ったとき、真っ先にやるべきは「英語力を上げること」ではありません。
「英語という器に、何を盛り付けるか」を考えることです。
英語はあくまで道具です。どんなに道具を磨いても、それで何を作るか決まっていなければ、宝の持ち腐れになります。
あなたがこれまでの仕事で、泥臭く積み上げてきた経験は何ですか?
日常の中で、誰に頼まれなくても調べてしまうほど好きなことは何ですか?
日本社会の中で長く働いてきたからこそ見える景色は何ですか?
この「自分の中にすでにあるもの」と英語を掛け合わせたとき、初めて、あなただけの「英語の仕事」の形が見えてきます。
英語力を磨くことと、自分を棚卸しすること。この2つは同時に、いえ、むしろ棚卸しを先に進めるべきなのです。
→ 詳しくはこちら:英語を仕事にしたいなら、最初にやるべき「自分の棚卸し」|5つの質問で見つける、あなたの英語の使い道
40代・50代の武器は「完璧さ」ではなく「厚み」
「ネイティブレベルじゃないと仕事になんてならない」そんな思い込みが、あなたにブレーキをかけてはいませんか?
確かに、翻訳や通訳は「正解」を求められるため、完璧さが不可欠です。しかし、英語を「使って」何かを届ける発信の世界では、完璧な文法よりも「中身の価値」が優先されます。
40代・50代のあなたには、20代には逆立ちしても真似できない圧倒的な強みがあります。それは「人生の厚み」です。
組織の論理を知っている。人間関係の機微がわかる。生活者としての実感がある。
この重みを英語に乗せたとき、たとえ文法が少々荒削りでも、「この話は面白い」「この視点は鋭い」と世界は耳を傾けます。
完璧な英語で中身が空っぽの文章より、多少荒削りでも「この人の話は面白い」と思わせる文章のほうが、ずっと強いのです。
最初の一歩は、自分の中を覗き込むこと
英語を仕事にするための最初の一歩は、単語帳を開くことではありません。
「英語で、誰に、何を伝えたいか」を、日本語でいいので書き出してみることです。
「海外の人に、日本の暮らしの知恵を伝えたい」
「英語を使って、家で静かに、でも社会と繋がって働きたい」
この「やりたいこと」の輪郭が見えると、学ぶべき英語のレベルも、目指すべき場所も、自然と絞られてきます。
ここが曖昧なままでは、どれだけスコアを上げても「英語はできるけど、何者でもない自分」から抜け出せません。
英語を仕事にする。それは、新しい自分になることではなく、「今の自分を、英語という新しい場所で活かすこと」。
その準備を、今日から始めてみませんか。