そして毎回、同じところに戻ってきます。
「また続かなかった。やっぱり私には無理なのかも」
先に、2つ書いておきます。
ひとつ。続かなかったのは、意志が弱いからではありません。
もうひとつ。「続かない人ほど、実は別の才能がある」という話でもありません。そういう慰め方をする記事はよくありますが、読んでいる本人が一番、それが慰めだと気づいています。
この記事で書くのは、もっと手前の話です。そもそも、何のためにTOEICを始めたのか。そこを整理すると、次にどうするかも見えてきます。
TOEICを始める理由は、だいたい2つ
その1:会社で必要だから
昇進の条件になっている。異動や海外案件に点数が要る。会社が受験料を出してくれる。
この場合、TOEICが正解です。代わりになるものがありません。目標点も、期限も、外から決まっている。迷う余地がないぶん、進みやすい。
その2:英語をやってきた証がほしいから
会社に言われたわけではない。誰かに求められたわけでもない。
ただ、英語をやってきた時間が長い。学生時代にやった。社会人になってからも英会話に通った。それなのに、手元に何も残っていない。
「私、英語やってるんです」と言うときに、何か添えられるものがほしい。数字なら、はっきりしている。だからTOEICを申し込む。
そして、この人たちは意志が弱いわけではありません。むしろ逆で、誰にも言われていないのに、自分の意志だけで何年も英語を続けてきた人たちです。
点数は、ちゃんと証になります
ここは、はっきり書いておきます。
800点、900点を取れば、それは間違いなく証です。本人の満足も大きい。人に言えるし、言われた側も素直にすごいと思う。何年もかけて取った人が誇るのは、当然のことです。
しかも、実利があります。求人票に「TOEIC800点以上」と条件が書かれた仕事は、いくらでもあります。海外案件のある部署、外資系の事務職、海外営業。点数で扉が開く世界は、確かに存在します。
次のような人には、TOEIC以外の選択肢を探す理由がありません。
- 会社で点数が要る人——昇進・異動・手当の条件になっているなら、迷う必要がありません
- 転職を考えている人——書類選考の段階では、点数が唯一の共通言語になります
- 高得点を狙える人——800点を目指せるところにいるなら、そのまま進むのが一番早い
数字のゴールは、自分で決めるもの
500点が580点になれば、次は600点。600点になれば、次は700点。
そうやって進んでいる人は、たくさんいます。この進み方は、正しいです。
途中の伸びにも意味があります。580点のときのほうが、500点だった頃より確実に読めるようになっている。数字が動いているということは、力がついているということです。
どこをゴールにするかも、自分で決めることです。600点で十分な人もいれば、900点まで行きたい人もいる。他人が決めることではありません。
だから、点数を目標に進んでいる人は、そのまま進めばいい。この記事は、その進み方を否定するものではありません。
それでも残る、「活かしきれていない」という感覚
ただ、点数が上がっても消えない感覚があります。
「英語、やってきたはずなのに、活かしきれていないな」
これは、点数の高さとは関係なく起こります。600点の人も言いますし、800点を持っている人も言います。
英語を「持っている」状態と、「使っている」状態は、別のものだからです。
点数は、持っていることの証明です。とても正確な証明で、それ自体に価値がある。でも、「その英語で何をしたか」には答えません。そこは、別のところで作るしかない。
教材が積読になるのも、たいていこの感覚が関わっています。教材が悪いわけでも、意志が弱いわけでもなく、「これを続けた先に何があるのか」が自分の中でぼんやりしているとき、手が止まりやすい。
逆に言えば、その先がはっきりしている人は続きます。会社で必要な人が続くのも、そこが見えているからです。
積んだ教材は、捨てなくていい
ここからは実用的な話です。
本棚の教材を処分する必要はありません。ただ、「1ページ目からやり直す」だけは、あまりうまくいきません。3回目の1ページ目に、新しい発見が少ないからです。
使い方を変えると、同じ本が急に役に立ち始めます。
| 教材 | これまでの使い方 | もうひとつの使い方 |
|---|---|---|
| 単語帳 | 最初から順に覚える | 引く。書いていて出てこなかった単語を、あとから索引で探す |
| 文法書 | 1章ずつ進める | 調べる。「この言い方で合っているか」を確認するときだけ開く |
| 公式問題集 | 解いて答え合わせ | 読む。長文パートを、問題を解かずに素材として読む |
共通しているのは、先に何かをやってから、教材に戻るという順番です。
覚えてから使うのではなく、使ってから覚える。この順番だと、覚える対象が「自分が実際に必要だったもの」に絞られます。だから残ります。
単語帳で apologize を覚えるのは難しい。でも、「日本人はなぜすぐ謝るのか」を英語で書こうとして調べた apologize は、忘れません。
もうひとつの選択肢として、書くという方法があります
「活かしきれていない」という感覚が残っている人に向けて、選択肢をひとつ書いておきます。
英語で何かを書いて、外に出すという方法です。
日本で暮らしている自分の視点を、英語で書いて、海外の読者に届ける。この書き手のことを、Write Up Lab ではグローバルエッセイストと呼んでいます。翻訳でも、通訳でも、英語講師でもない仕事です。
点数と比べて優れている、という話ではありません。手に入るものの種類が違うだけです。
| TOEICのスコア | 英語で書いた文章 | |
|---|---|---|
| ゴール | 自分で決める(600点、800点…) | 自分で決める(1本、10本…) |
| 手に入るもの | 数字。求人の条件を満たせる | 文章そのもの。読んでもらえる |
| 積み上がり方 | 次の受験日に、まとめて動く | 1本書き上げるたびに、1本増える |
| 反応 | 返らない | コメントや反応が返ってくる |
| 向いている場面 | 会社や転職で、点数が要るとき | 英語で何かを届けたいとき |
両方やっている人もいます。どちらかを選ばなければいけないものではありません。
ただ、「活かしきれていない」という感覚は、点数を上げても埋まりにくい。そこを埋めるのは、たいてい「誰かに届いた」という経験のほうです。
海外の読者から “I never knew this about Japan.”(日本にこんなことがあるなんて知らなかった)と返ってくる。それは、点数では起きないことです。
ただし、書くほうが向いているとは限りません
ここを飛ばすと、この記事は勧誘になってしまうので、正直に書きます。
TOEICが続かなかった人が書き始めれば続く、というわけではありません。
書くことも、同じように止まる人がいます。1本目を書き上げて、2本目が出てこないまま終わる。よくあることです。
分かれ目は「伝えたいことを持っているかどうか」ではありません。読む相手を、具体的に思い浮かべられるかどうかです。
「誰かに読まれたい」だと、たいてい続きません。相手がぼんやりしていると、書く内容も決まらないからです。
「日本に来たことがなくて、日本の暮らしに興味がある人」くらいまで絞れると、書けるようになります。何を説明すべきで、何を省いていいかが決まるからです。
逆に言うと、ここさえ決まれば、英語力が高くなくても書けます。文法の正確さより、相手が決まっていることのほうが効きます。
まとめ
- 教材が積読になるのは、意志の問題ではありません
- 点数はちゃんと証になります。800点あれば求人の扉も開く。目指せる人は、そのまま進むのが一番早い
- 500→580→600と進むのは、ちゃんと機能している進み方。どこをゴールにするかは自分で決めること
- ただ、「活かしきれていない」という感覚は、点数が上がっても消えないことがある。800点の人も言います
- 積んだ教材は捨てなくていい。覚えるためではなく、引くために使う
- 選択肢のひとつとして、書いて外に出す(グローバルエッセイスト)という方法がある。優劣ではなく、手に入るものの種類が違う
- ただし、書けば必ず続くわけでもない。決め手は「読む相手を具体的に思い浮かべられるか」
本棚の教材は、失敗の記録ではありません。何年も英語を諦めていない人だけが、あの本を買います。
英語で書いたものを外に出すという方法については、グローバルエッセイストとは|学んだ英語を活かして、世界に届ける仕事でまとめています。