新野さん(助産師・ニューヨーク帰国子女)|認定エッセイストインタビュー
グローバルエッセイスト養成講座を修了し、実際に英語エッセイを書き続けているライターたちのストーリーをお届けします。
かつてニューヨークで暮らし、英語が日常だった新野さん。
帰国して30年。日本語中心の生活の中で、英語を忘れていく自分を、どこかでずっと「残念だな」と思っていたと言います。
そんな彼女が講座を受講し、書き上げた初めての英語エッセイを夫に見せたとき、夫は目に涙を浮かべていました。
「こんな才能があったなんて」
30年のブランクの向こうに、自分でも忘れていたものを見つけた新野さんのストーリーを伺いました。
「忘れていく自分が、残念だった」
受講前、英語に対してどんな気持ちを持っていたのか。
新野さんは、ニューヨークにいた頃は英語が日常だった、と振り返ります。
けれど帰国して30年、気がつけばどんどん忘れていった。
「寂しいというか、残念というか。その気持ちがずっとあって」
直近の1年は、独学で文法を学び直してもいました。ただ、次に何をすればいいのかが分からない。そのタイミングで、この講座に出会ったそうです。
忘れていく自分を「残念」と感じ続けていたのは、英語が新野さんにとって、ただの科目ではなかったからでしょう。
一度は日常そのものだった言葉です。それが遠ざかっていくことは、自分の一部が薄れていくことでもありました。
「私を信じてください」という言葉
受講の決め手は、律子先生との事前のやり取りでした。
「私を信じてください、精一杯やるので、ぜひ」
そう言われたときの言葉の重さと熱意が、すごかったと言います。
「年齢も違うのに、こんなに真剣に向き合ってくれる人がいるんだって」
それが、背中を押してくれました。
次に何をすればいいのか迷っていた人にとって、必要だったのは教材ではなく、「この人となら」と思える相手だったのだと思います。
学びを続けられるかどうかは、方法よりも、そこに誰がいるかで決まることが少なくありません。
英語と向き合うことは、自分と向き合うことだった
受講してみて感じたのは、「英語を学ぶというより、自分自身と向き合う時間だった」ということでした。
自分が何を感じていて、何を伝えたいのか。それを掘り下げながら言葉にしていく作業が、思っていた以上に深かったと言います。
「語学の勉強というより、自分の内側を整理していく感じでした」
とくに、助産師として多くの命に向き合ってきた経験。
新野さんにとっては当たり前の日常でしたが、英語で書こうとすると、日本語のときとは違う感覚が心に湧いてきたそうです。
自分でも忘れていたような深い想いまで言葉にできたことが、エッセイとしての力になったのだと、新野さんは振り返ります。
日本語では「当たり前」のまま通り過ぎてしまうことが、英語にしようとした瞬間に、立ち止まって見つめ直すものに変わる。
言語を変えることは、自分の経験を、もう一度別の角度から見ることでもあるのです。
夫が、ウルウルしていた
いちばん印象に残っているのは、書き上げた英語エッセイを夫に見せたときのことでした。
「こんな才能があるなんて」
そう言いながら、夫は目をうるませていたそうです。
「自分では気づいていなかったことを、一番近くにいる人が見てくれて、それがすごく嬉しかったです」
新野さんは、昔と今の英語の違いを、こう表現します。
「昔の英語は生きるための道具だったけれど、今の英語は『私を表現するための大切な鍵』のようなものです」
自分にしか書けない視点を言葉にできたからこそ、夫も感動してくれたのだと思う、と話してくれました。
海外の読者に届く前に、いちばん近くにいる家族が先に反応する。
それは、そのエッセイが英語の練習ではなく、本当に新野さんの言葉で書かれていたことの証拠でもあります。
30年越しの、「一生の楽しみ」
今、英語はどんな存在なのか。
「30年のブランクがあっても、ここまで来られたんだって思うと、もう怖いものはないというか」
これからも続けていける、一生の楽しみができた。新野さんは、そう言います。
年齢を理由に迷っている人がいたら、伝えたいことがあるそうです。
「そんなの、関係ないよ」
お話を伺っていて印象に残ったのは、30年のブランクがあっても、自分の内側にあるものは消えていなかった、ということでした。
忘れていたのは英語の単語や文法であって、ニューヨークで暮らした日々も、助産師として命に向き合ってきた時間も、新野さんの中にずっとありました。
英語を学び直したことで戻ってきたのは、英語力だけではありません。
自分でも忘れていた想いを、自分の言葉で表現できるという感覚です。
新野さんにとって英語は、かつては生きるための道具でした。
30年を経て、それは自分を表現するための鍵になりました。その鍵を、新野さんはこれから一生、手放さないのだと思います。
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