英語のブランクを抱えたまま、また始めたくなるのはなぜか

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英語のブランクを抱えたまま、また始めたくなるのはなぜか

英語から離れて、何年も経っていた。
子育てが一段落して、ふと気づいたら10年以上が過ぎていた。仕事に追われているうちに、学生のころ好きだった英語がいつの間にか「昔のこと」になっていた。
なのに、また気になっている。

海外ドラマを字幕なしで観ている人を見て、羨ましいと思った。子どもが英語をすらすら読んでいるのを見て、複雑な気持ちになった。旅先で外国人に話しかけられて、何も言えなかった自分が悔しかった。
「また英語をやってみたい」。でもすぐに、もう一人の自分が言う。「ブランクが長すぎる」「どうせまた続かない」「今さら遅い」。
この記事は、その「やりたい」と「でも無理かも」の間で止まっている人に向けて書いています。

ブランクができたのは、あなたのせいじゃない

まず、一つだけ言わせてください。
英語から離れてしまったのは、あなたの意志が弱かったからではありません。

日本の英語教育は長い間、「読む・訳す・テストで点を取る」ことに特化してきました。英語を「使う」ための訓練は、ほとんど行われてこなかった。だから多くの人が、学校を卒業した瞬間に英語を「終わったもの」として手放してしまう。使う場がない。使えた実感がない。だから離れる。これは自然なことです。
さらに、社会人になってからの日本の環境も英語から遠ざかる方向に働きます。日常生活は日本語だけで完結する。職場でも英語が必要な場面は限られている。子育て中は自分のことを後回しにするのが当たり前になる。英語から離れる理由は、生活のあちこちに転がっていた。
ブランクができたのは、あなたが英語を大切にしなかったからではなく、英語を使い続けられる環境がなかっただけです。

なぜ今、また気になっているのか

ブランクを抱えながらも「また英語をやりたい」と思うとき、その気持ちの奥には何があるのでしょうか。

40代・50代になって英語への興味が再燃する人には、共通した背景があります。
子育てが一段落した。定年が見え始めた。親の介護が始まった。「○○ちゃんのお母さん」「○○部長」という肩書きが薄れてきた。誰かのために使ってきた時間が、少しずつ自分に戻ってきた。

心理学では、人生の中盤に差しかかったとき「自分はこのままでいいのか」という問いが浮上することを「ミッドライフクライシス」と呼びます。病気でも異常でもない。人生の後半を前にして、「本当にやりたかったことは何か」を問い直す、自然な心の動きです。

そのときに、ずっと気になっていたものが浮かび上がってくる。長い間、後回しにしてきたものが。
英語が気になっているとしたら、それはあなたの中でずっと「やり残し」として残っていたからです。忘れていたのではなく、封印していただけ。その封印が、今少しずつ解けてきている。

「また挫折するかも」という恐怖の正体

再開をためらう理由として一番多いのは、過去の挫折経験です。

英会話スクールに通ったけど続かなかった。TOEICの勉強を始めたけど三日坊主だった。留学から帰ってきたのに、結局英語は身につかなかった。
こういう経験が積み重なると、「自分は英語ができない人間なんだ」という思い込みが生まれます。これは劣等感です。そしてこの劣等感が、「また始めても、どうせ同じになる」という恐怖に変わっていく。

でも、少し立ち止まって考えてみてください。
あのとき続かなかったのは、本当に「自分の能力」の問題だったでしょうか。

英会話スクールが続かなかったのは、通う時間もお金も捻出しながら、仕事や家事や育児を同時にこなしていたからかもしれない。TOEICの勉強が三日坊主だったのは、なぜ点数を上げたいのかが自分でもよくわからなかったからかもしれない。留学で英語が身につかなかったのは、帰国後に使い続ける環境がなかったからかもしれない。
挫折したのは、意志が弱かったからではありません。続けるための条件が、そろっていなかっただけです。

ブランクがあっても大丈夫な、本当の理由

「ブランクがあっても大丈夫」と言うと、根拠のない励ましに聞こえるかもしれません。でも、これには理由があります。

一つ目は、一度学んだ言語は完全には消えないということです。脳科学の観点から言うと、長期間使わなかった言語スキルは「眠っている」状態であって、消えているわけではありません。触れ始めると、思ったより早く感覚が戻ってきます。実際に再開した人の多くが「思ったより覚えていた」と言います。

二つ目は、40代・50代の今のほうが、有利な部分があるということです。
語学習得には「流動性知能」と「結晶性知能」の2種類の力が関わっています。流動性知能は記憶力や処理スピードで、年齢とともに下がっていく。でも結晶性知能は知識・経験・理解力のことで、年齢とともに伸び続けます。

英語を「読む・書く」という領域は、結晶性知能が大きく関わります。つまり、単語の丸暗記やリスニングの瞬発力は若いほうが有利でも、文章を読んで理解する力、自分の考えを英語で書く力は、40代・50代のほうが伸びやすい。

学生のころ英語が苦手だった人でも、人生経験を積んだ今のほうが「読んで理解する力」は上がっています。ブランクは損失ではなく、その間に積み上げてきたものがある、ということでもあります。

再開するとき、最初にやること

「大丈夫」とわかっても、最初の一歩が重いのは変わらない。だから、最初のハードルをできるだけ低くすることが大事です。

文法書を買わなくていいです。アプリをダウンロードしなくていいです。TOEICを申し込まなくていいです。
最初の一週間でやることは、ただ「英語に触れる」だけです。

好きなテーマの英語記事を1本読む。昔好きだった洋楽を歌詞を見ながら聴く。英語で3行だけ日記を書いてみる。「勉強」ではなく、「再会」のつもりで始める。

久しぶりに英語に触れたとき、「あ、これ知ってる」という感覚が少しでも戻ってきたなら、それで十分です。その感覚が、次の一歩を生みます。

ブランクを抱えたまま、それでも気になっているということ

最後に一つだけ。
10年、20年のブランクがあっても、英語が気になっている。これは、その間ずっと英語を「やり残したこと」として心のどこかに置いてきた、ということです。

忘れていたわけじゃない。ただ、後回しにし続けてきた。
そして今、また気になっている。それは「本当にやりたかったこと」が、まだ消えていないからです。

ブランクの長さは関係ありません。やり残したことに、期限はない。「また始めたい」と思った今が、始めどきです。

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