「せっかく英語を勉強したのに、使う場所がない」
学生時代に真面目にやった。social mediaで海外の投稿も読める。TOEICも受けた。それなのに、その英語を使う場面が生活のどこにもない。
「英語を仕事にする」と考えたとき、たいていの人が思い浮かべるのは翻訳・通訳・英語講師の3つです。そしてすぐに「私にはそこまでの英語力はない」と結論が出て、話が終わります。
でも、英語を活かせる仕事はもっとあります。30個あります。しかも、未経験から始められるものが、その中に7つあります。
この記事では、30個すべてを並べたうえで、「あなたの経験と英語をどう掛け合わせるか」という選び方までお伝えします。
先に、選び方の3つの軸
30個を漫然と眺めても選べません。先に基準を持っておいてください。
軸1:いまの生活に合うか
在宅か、対面か。フルタイムか、副業か。時間が読める仕事か、相手の都合に振り回される仕事か。
子育て中や介護中の人が「通訳」を選ぶと、まず続きません。逆に、家で自分のペースで進められる仕事なら、細切れの時間でも積み上がります。
軸2:自分の経験と掛け算できるか
ここが一番大事です。英語だけで戦うと、必ず「もっと英語ができる人」に負けます。
営業経験があるなら外資系の営業。経理を長くやってきたなら外資系のバックオフィス。子育て経験があるなら子ども向け英語教室や、日本の子育てを海外に伝える仕事。
40代・50代の強みは、英語力ではなく掛け合わせる相手を持っていることです。20代にはこれがありません。
軸3:始めるハードルが低いか
特許翻訳や医療翻訳は単価が高い。でも、いきなりは無理です。
まずはハードルの低いものから始めて、実績を作る。実績があると次の仕事が取れる。この順番を飛ばそうとすると、どこにもたどり着けません。
【1】話す力を使う仕事
1. 英会話講師(オンライン・対面)
定番中の定番です。ただし今は、フィリピンなど海外の講師と価格競争になりやすい。差別化には工夫が必要です。
2. 通訳(会議通訳・逐次通訳)
高い英語力と瞬発力が求められます。未経験からいきなりは厳しい。ただし、ビジネス経験があれば、その業界の通訳として強みになることがあります。
3. 通訳案内士(インバウンド観光ガイド)
国家資格が必要ですが、最近は資格なしでもガイドできるケースが増えています。インバウンド需要は伸びている一方、AI通訳アプリとの競争もあります。
4. 外資系企業の営業
英語力よりも営業スキルが求められることが多い仕事です。英語は「あったほうがいい」程度の場合もあります。営業経験がある人の掛け算先として現実的です。
5. 海外顧客のカスタマーサポート
メールやチャットが中心なら、スピーキングに自信がなくても始めやすい。定型的なやり取りが多いのも入りやすさの理由です。
6. 国際会議のコーディネーター
通訳ではなく、会議の段取りや調整を英語でやる仕事。段取り力が問われます。事務職の経験が活きます。
7. ホテルのフロント(外国人対応)
定型的なやり取りが多いので、英語力がそこまで高くなくても対応できます。インバウンドが増えて求人も増えています。
この分野の向き・不向き。話す仕事は即効性がある反面、瞬発力が求められます。「考える時間がない」のが最大の特徴です。1〜3は専門性が高く、参入にはそれなりの英語力と経験が要ります。一方、5と7は定型的なやり取りが中心なので未経験でも入りやすい。「英語で話すと、言いたいことの半分しか出てこない」と感じている人は、この分野は後回しでいいと思います。
【2】書く力を使う仕事
ここが、40代・50代に最も相性のいい分野です。
書く仕事には推敲する時間があります。辞書を引ける。言い回しを直せる。会話のような瞬発力がいりません。そして、経験や視点の深さがそのまま強みになります。
8. グローバルエッセイスト
日本のことを英語で書いて、海外の読者に届ける仕事です。翻訳ではなく、最初から英語で、自分の視点で書く。
中学英語から始められて、年齢が武器になります。日本で暮らしてきた経験そのものが書く中身になるからです。海外の読者が読みたいのは、ガイドブックの情報ではなく「日本に住んでいる一人の人が、今日何を感じたか」。それを書ける人は、実はとても少ない。
この30個の中で、未経験からのハードルが最も低く、しかも積み上がるのがこの仕事です。
9. 英文コピーライター
広告やマーケティング用の英語を書く仕事。センスと英語力の両方が必要で、ハードルは高めです。
10. 英語ブロガー
自分のブログで英語の記事を書く。8との違いは、テーマがもっと自由なことです。趣味の話でもOK。収益化までに時間はかかりますが、自分のペースでできます。
11. 越境ECの商品説明ライター
日本の商品を海外に売りたい企業の商品説明を英語で書く仕事。専門知識より「買いたくなる文章」が書けるかどうかが問われます。日本の消費者目線が、そのまま強みになります。
12. 英語のSNS運用代行
飲食店や宿泊施設のInstagramやFacebookを英語で運用する。投稿文を英語で書き、ハッシュタグを設定する。1日15分程度で済む案件もあります。
13. 英語のメールマガジン作成
海外向けにニュースレターを配信したい企業の仕事。定期的に書く案件なので、収入が安定しやすいのが特徴です。
14. 企業の英語コンテンツ制作
Webサイトやパンフレットの英語版を作る仕事。翻訳に近いですが、「訳す」というより「英語で新しく書く」に近い案件も多いです。
【3】翻訳・ローカライズの仕事
専門性が高いほど単価が上がる分野です。ただしAI翻訳の進化で、単純な翻訳の需要は減少傾向にあります。「ただ訳す」のではなく、文化的なニュアンスを調整できるかどうかが、今後の分かれ目になります。
15. 実務翻訳(契約書・マニュアル)
専門知識が必須。法務、IT、医療など、分野に特化するほど単価が上がります。
16. 映像字幕翻訳
映画やドラマの字幕を作る仕事。文字数制限があるので、訳す力より削る力が必要です。
17. Webサイトの翻訳・ローカライズ
単なる翻訳ではなく、文化に合わせた調整ができる人は重宝されます。比較的入りやすい分野です。
18. アプリやゲームの翻訳
入りやすい分野ですが、AIの精度が上がっていて単純な翻訳は減りつつあります。
19. 特許翻訳
専門性が非常に高く、単価も高い。理系のバックグラウンドがあると有利です。
20. 医療・薬事翻訳
資格や実務経験が求められますが、需要は安定しています。AIに代替されにくい分野です。
この分野の向き・不向き。15・19・20は専門知識が必須で、未経験からは現実的ではありません。17・18は比較的入りやすい。ただしこの分野全体が、いま最も変化にさらされています。次の章で詳しく書きます。
AIで減る仕事と、残る仕事
この30個を眺めるとき、避けて通れない話があります。AIです。
正直に書きます。「英語を別の言語に置き換えるだけ」の仕事は、確実に減っています。単純な翻訳、単純な書き起こし、定型メールの英訳。このあたりは、すでにAIのほうが速くて安い。
では、何が残るのか。「その人にしか出せないもの」が混ざっている仕事です。
| 減っていく | 残る・伸びる | |
|---|---|---|
| 翻訳 | マニュアル、定型文書の翻訳 | 文化に合わせて調整するローカライズ(17)、専門分野の翻訳(19・20) |
| 書く | 事実を並べるだけの紹介文 | 一人称の視点が入った文章(8・10)、買いたくさせる文章(11) |
| 話す | 定型的な案内 | その場の空気を読む対応(7)、体験そのものの提供(27) |
AIは、すでにどこかに書かれていることを、うまく並べ直すのが得意です。逆に言えば、まだどこにも書かれていないこと、あなたが今朝見た光景、20年働いて気づいたこと、子育ての中で感じた違和感は、AIには出せません。
だからこの先、価値が上がるのは「英語ができる人」ではなく、「英語で、自分にしか言えないことを言える人」です。
そしてこれは、40代・50代に圧倒的に有利な条件です。持っている材料の量が違うからです。
【4】教育・コーチングの仕事
「英語力+教える技術」が必要な分野です。社会人経験がそのまま説得力になります。
21. 子ども向け英語教室の運営
自宅やオンラインで開けます。教える技術が必要ですが、子育て経験がそのまま活きる場合もあります。
22. 企業向け英語研修トレーナー
ビジネス英語を企業の社員に教える仕事。社会人経験がある40代50代のほうが、圧倒的に説得力があります。「会議で英語が出てこない」という悩みに、実感を持って答えられるからです。
23. 英語学習コーチ(個人向け)
教えるのではなく、学習計画や進捗管理をサポートする仕事。「TOEIC◯点を3か月で」といった成果型だと高単価になります。
24. 英語教材の作成・監修
教材を作る側に回る仕事。出版社やアプリ会社からの案件です。教育経験があると有利。
この分野の向き・不向き。「英語ができること」と「教えられること」は別の能力です。教えるのが好きでない人が選ぶと苦しくなります。逆に、22・23は英語力よりも社会人経験のほうが効くので、企業で長く働いてきた人には現実的な選択肢です。
【5】ニッチだけど狙い目の仕事
この6つは、まだ競争が少ない分野です。とくに29・30は、「日本に住んでいる日本人」というだけで差別化できます。
25. 海外クラウドソーシングでのリサーチ業務
海外の企業が「日本市場について調べてほしい」という案件を出しています。日本語のサイトを読んで英語で要約する、競合調査をするなど。日本に住んでいること自体が価値になる仕事です。
26. 英語での書類作成代行
ビザ申請、海外進学の書類、英文レジュメの作成。個人からの依頼が多い分野です。
27. インバウンド向け体験プログラムのガイド
料理教室、茶道体験、街歩きツアーなど。英語力より「体験そのものの魅力」が大事です。趣味が仕事になるパターン。
28. 英語でのインタビュー・取材代行
海外の人にインタビューして記事にまとめる仕事。ライティング力とコミュニケーション力の両方が必要です。
29. 海外向けYouTubeチャンネルの企画・運営
台本を書いてから話せばいいので、スピーキングに自信がなくても始められます。続けるとファンがつき、他の仕事につながることも多い。
30. 日本文化を英語で紹介するポッドキャスト
スマホ1台で始められます。声の仕事なので、顔出しが嫌な人にも向いています。
未経験から始めるなら、この7つ
30個の中には、専門知識や高い英語力が必要なものもあります。「全部は無理。未経験の私でも始められるのはどれ?」という人のために、ハードルが低いものだけを抜き出して、必要な英語力・始め方・収入の目安をまとめました。
| 仕事 | 英語力の目安 | 始め方 | 収入の目安 |
|---|---|---|---|
| 8. グローバルエッセイスト | 中学英語から (TOEIC550〜) |
MediumやWordPressで、日本の文化や暮らしを英語で書く | 最初は無収入。10〜20本たまると寄稿や企業案件へ。1本3,000〜10,000円 |
| 10. 英語ブロガー | 中学英語から | 自分のブログを開設。テーマは趣味でもOK | 最初は無収入。広告・アフィリエイト収入 |
| 11. 越境ECの商品説明 | 中級〜 (TOEIC600〜) |
クラウドワークス等で「英語 商品説明」で検索 | 1商品500〜2,000円。慣れれば1時間で2〜3商品 |
| 12. 英語のSNS運用代行 | 中級〜 | インバウンド対応をしたい飲食店・宿に直接提案、またはクラウドソーシング | 月5,000〜30,000円(1アカウント) |
| 25. 海外リサーチ業務 | 中級〜 | Upwork、Fiverrに登録。「Japanese researcher」で検索 | 1件2,000〜10,000円 |
| 26. 英語の書類・メール代筆 | 中級〜 | ココナラ、クラウドソーシングで出品 | 1通1,000〜5,000円 |
| 30. ポッドキャスト・YouTube | 中級〜 | スマホ1台で録音・撮影。Spotify for Podcastersで配信 | 最初は無収入。リスナーが増えれば広告・企業案件 |
この7つに共通しているのは、「始めるのにお金がかからない」「失敗してもリスクがない」ということです。
本業を続けながら、副業として始めるなら
「本業を辞めるつもりはない。でも英語を少しでも収入に変えられたら」という人が、いちばん多いはずです。
副業として現実的なのは、上の表の7つすべてです。全部が在宅でできて、時間の融通がききます。
ただし、副業として始めるときに一つだけ気をつけてほしいことがあります。
「単発で終わる仕事」と「積み上がる仕事」を、区別してください。
書類の代筆やリサーチ業務は、やった分だけお金になります。即金性があるのは魅力です。でも、やめた瞬間にゼロに戻ります。手元に何も残りません。
一方、8や10のように「書いたものが公開されて残る」仕事は、最初はお金になりません。でも記事が資産として積み上がり、それ自体がポートフォリオになって、次の仕事を連れてきます。半年後、1年後に効いてくるのはこちらです。
理想は、両方を持つこと。即金の仕事で現金を作りながら、積み上がる仕事を並行して育てる。どちらか一方だけだと、続かないか、いつまでも増えないかのどちらかになります。
どこから始めればいいか
30個並べましたが、全部を検討する必要はありません。
ひとつ言えるのは、「英語の仕事=翻訳か講師」という思い込みを外すだけで、選択肢が一気に広がるということです。この30個の中に、あなたの経験と英語を掛け合わせてぴったりくるものが、きっとあります。
そして、迷ったら8番(グローバルエッセイスト)から始めるのをおすすめします。理由は3つです。
- お金がかからない。失敗してもリスクがゼロ
- 中学英語から始められる。資格も留学経験も要らない
- 書いたものが消えない。他のどの仕事に進むときも、実績として使える
26番の書類代筆に進むにしても、28番のインタビュー代行に進むにしても、「英語で書いたものが5本ある」という事実は、必ず武器になります。逆から言えば、それがないと、どの仕事も最初の1件が取れません。
まとめ|完璧な準備は、いりません
英語を活かせる仕事は30個あります。そのうち7つは、未経験から、お金をかけずに、今週中に始められます。
考えすぎると動けなくなります。おすすめは「一番ハードルが低いもの」から手をつけること。
今週中に1つ選んで、アカウントを作るところまでやってみてください。「始めた」という事実が、次のステップへの一番の推進力になります。
あなたが積み上げてきた経験は、英語と掛け合わせた瞬間に、誰も持っていない組み合わせになります。あとは、その組み合わせを置く場所を決めるだけです。