なぜ日本人は英語を何年も勉強しているのに使いこなせないのか

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中学校から英語を習い始めて、高校、大学と続ける。社会人になってからも、英会話スクールに通ったり、TOEICを受けたりする。

6年、10年、人によっては20年以上。これだけの時間を英語に費やしているのに、「英語が使えます」と自信を持って言える日本人は、驚くほど少ない。

海外の人からよく聞かれます。「日本人はあんなに真面目に英語を勉強しているのに、なぜ話せないの?」と。

この問いに対する答えは、「勉強が足りない」ではありません。勉強のしかたが、根本的にズレている。そして、そのズレに気づかないまま何年も続けてしまう構造に問題があるんです。

この記事では、日本人が英語を使いこなせない本当の理由と、そこから抜け出すための考え方をお伝えします。

理由1:「頭で理解する」勉強しかしていない

日本の英語教育は、「理解する」ことに偏っています。

文法のルールを覚える。単語の意味を暗記する。長文を読んで内容を把握する。すべて「頭で理解する」作業です。

でも、言語は本来「身体で覚える」ものです。

日本語を話すとき、「この文は主語+述語+目的語で構成されているから……」なんて考えませんよね。口が勝手に動く。耳が自然に意味を拾う。それは、何万回も使ってきた経験が、身体に染み込んでいるからです。

英語も同じはずなんです。でも日本の勉強法では、英語を「知識」として頭に入れることに全エネルギーが注がれている。「身体に染み込ませる」プロセスが、ごっそり抜け落ちている。

だから、テストでは点が取れるのに、いざ話そうとすると口から出てこない。頭では「知っている」のに、身体が「使えない」。この状態を何年続けても、使いこなせるようにはなりません。

理由2:英語を「日本語に変換して」理解しようとする

日本人が英語を読んだり聞いたりするとき、無意識にやっていることがあります。

英語 → 日本語に翻訳 → 理解

このプロセスです。

“I have a pen” を聞いて、「”I”は”私”、”have”は”持っている”、”a pen”は”ペン”……つまり”私はペンを持っている”」と頭の中で翻訳している。

このやり方で理解はできます。テストの点も取れる。でも、会話のスピードにはまったく追いつかない。相手が次の文を話している間に、こちらはまだ前の文を翻訳している。

英語を使いこなしている人は、このプロセスが違います。

英語 → そのまま理解

“I have a pen” を聞いた瞬間に、ペンを持っている情景がそのまま浮かぶ。日本語を経由しない。

この「英語を英語のまま受け止める感覚」は、教科書をいくら読んでも身につきません。英語に大量に触れて、使って、「あ、こういうことか」と身体で感じる経験を繰り返すことでしか手に入らない。

理由3:「間違えること」を異常に恐れている

これは文化の問題でもあります。

日本の英語教育では、間違い=減点です。正しい答えを出すことが求められ、間違えると恥ずかしい思いをする。この経験が積み重なって、「間違えるくらいなら黙っていよう」という行動パターンが染み付いてしまう。

でも、言語の習得において、間違いは最も効率の良い学習方法です。

間違えて、「あ、これは違うのか」と気づく。次に同じ場面で正しい表現が出てくる。この「間違い→修正→定着」のサイクルが、言語を身体に染み込ませるプロセスそのものです。

間違えることを避けている限り、このサイクルが回らない。つまり、上達しない。

インド人やフランス人が、文法が不完全でも堂々と英語を話せるのは、間違いを恐れていないからです。間違えながら使い続けた結果、身体に英語が染み込んでいる。日本人が同じ時間勉強しても使いこなせないのは、間違えることを避け続けてきたからです。

理由4:「使う場」がないまま勉強だけ続けている

英語を勉強している人に「その英語、最近いつ使いましたか?」と聞くと、多くの人が言葉に詰まります。

勉強はしている。でも使っていない。使う場がない。

これが日本の英語学習の最大の問題です。

インプットだけを何年も続けて、アウトプットがゼロ。知識は増えていくのに、使った経験がない。これは、素振りを10年間やっているのに、一度もバッターボックスに立ったことがないようなものです。

素振りのフォームはきれいかもしれない。でも、実際のボールを打ったことがない人は、いつまでも「打てる人」にはなれない。

英語も同じです。使ってみて初めてわかることがある。「あ、この場面ではこの表現が自然なんだ」「この単語、テキストでは習ったけど実際にはあまり使わないんだ」。この気づきは、使わなければ一生得られません。

では、どうすればいいのか

ここまで読んで、「じゃあ今までの勉強は無駄だったの?」と思うかもしれません。

無駄ではありません。あなたが積み上げてきた知識は、ちゃんと土台になっています。問題は、その土台の上で「使う」ステップに進んでいないことです。

やるべきことはシンプルです。

まず、英語を「身体で覚える」時間を作る。テキストを目で読むだけでなく、音読する。シャドーイングする。声に出すことで、英語のリズムとパターンが身体に入っていきます。

次に、英語を「日本語に変換しない」練習をする。簡単な英語の本やポッドキャストを、日本語に訳さずにそのまま受け止める。最初は曖昧でも構いません。「なんとなくわかる」を繰り返すうちに、英語をそのまま理解する回路が育っていきます。

そして何より、使う。間違えてもいいから、外に出す。

英語で3行書いてみる。インスタに投稿してみる。独り言を英語で言ってみる。オンライン英会話で、文法が崩れてもいいから自分の考えを伝えてみる。

この「使う→間違える→修正する→また使う」のサイクルを回し始めた瞬間に、何年も止まっていた歯車が動き出します。

「使いこなせない」は永遠ではない

日本人が英語を使いこなせない理由は、才能がないからでも、勉強が足りないからでもありません。「頭で理解する」勉強に偏りすぎて、「身体で使う」経験が圧倒的に不足しているからです。

でも、この構造に気づけば、変えられます。

完璧を待たなくていい。間違えてもいい。大事なのは、頭の中にある英語を、外に出すこと。使ってみること。その1回が、10年分の勉強より大きな変化をもたらすことがあります。

あなたの中にはすでに、何年分もの英語の知識が蓄えられています。あとは、そのふたを開けるだけです。

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